産業保健関係者の連携等に関する実態調査
総 括 | 埼玉産業保健推進センター | 所 長 | 伊藤 勇 |
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共同研究者 | 埼玉産業保健推進センター | 相談員 | 生駒 賢治 |
松永 千秋 | |||
埼玉県医師会産業医会 | 副会長 | 柏崎 研 | |
埼玉産業保健推進センター | 副所長 | 蓜島 明 |
総 括 | 埼玉産業保健推進センター 所 長 伊藤 勇 |
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共同研究者 | 埼玉産業保健推進センター 相談員
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埼玉県医師会産業医会 副会長 柏崎 研 |
I. はじめに
産業保健活動を効果的に推進するためには、事業場の労働衛生管理体制の確立と産業保健関係者の連携による活動が重要である。そこで、事業場の現状を探り、今後の産業保健活動の一層の進展と充実に資することを目的として、実態調査を行ったものである。
II. 調査対象と内容など
1. 調査は県内の労働者50名以上の事業場を対象として無作為抽出した約1800事業場に対して調査票を郵送のうえで協力依頼し、協力が得られた事業場のうち集計・分析可能な375事業場を有効回答数として集計・分析を行った。
2. 調査事項としては、労働衛生管理体制と活動の状況、産業保健関係者の連携状況、健康管理の推進状況に大別し、質問内容をできる限り産業保健活動の取り組み意識の高揚に結びつき、自主点検にも活用できるようなものとすることに配慮した。
III. 結果と考察
1. 有効回答事業場としては、業種については全般にわたり、規模別状況は50人未満:12事業場、50~99人:34事業場、100~199人:152事業場、200~299人:48事業場、300~399人:28事業場、400~499人:14事業場、500~999人:31事業場、1000人以上:20事業場、規模不明:32事業場となっていた。
2. 回答事業場の産業保健活動などの概要としては、次のとおりであった。
【1】労働衛生管理を担当部署として専課・係制を取っている事業場は49(13%)、人事労務担当課で担当している事業場とする事業場296(79%)、その他となり、事業場の労働衛生管理体制の確立状況は共に80%を超える高率を示していた。なお、産業医、衛生管理者が未選任事業場の今後の方向としては前向きに検討すると回答されている。
【2】72%の事業場で衛生管理規定を作成、また、61%の事業場で労働衛生管理計画書を作成していた。なお、管理規定で衛生管理者、産業医の職務・権限について定めている事業場は半数程度で改善に向けた啓発活動が必要と考える。
【3】事業場の産業保健・衛生管理活動の要となる衛生管理者の衛生管理業務量調査(他の業務を兼務する衛生管理者の状況)によると、業務量は業種・規模に関係なく次のとおり「わずかである」とされた事業場が多く、衛生管理業務が補助的になっていることが懸念された。
3. 産業保健関係者の連携状況について
【1】効果的な産業保健活動を展開するためには関係者の連携が重要で、「委員会以外の機会設定による関係者間の連絡調整、連携を図っているか」については、33%の事業場で関係者との連絡会を設けているとされ、規模が大きくなればその状況は高まっていた。また、日頃の関係者相互間の連絡調整が産業保健活動の推進には重要でもある。その状況としては次のとおりとなっており、必ずしも望ましい状況とは言えずとも現状では一定の評価をすることができるものと考える。
【3】産業医が安全衛生委員会の委員となっていても出席状況は必ずしも良好とは言い難い状況である。その要因は46%の事業場で産業医に開催通知を行ってない状況や、通知する場合でも口頭によるものが15%を超えていることであり、産業医の出席が良好な事業場では開催通知以外に出席の確認を取っていること(12%の事業場で行っていた)が明らかになり、事業場側の今後の積極的な働きかけに期待するところである。
4. 健康診断結果による事業場の対応について
【1】検診結果で異常所見のあった者については、医師から意見を聴き適正な事後措置を行わなければならないが、これに係わり医師への情報提供者、意見を聴取する際の関係立ち会い者の望ましい者として事業場が考えている者は、医師への情報提供者には人事労務担当責任者とするもの48%で、衛生管理者34%となっていた。また、意見聴取時の立ち会い者としては、人事労務担当責任者とするもの50%、衛生管理者36%となり、ともに衛生管理者より直接労務管理をしている人事労務担当責任者が望ましいとされ、労働者の健康管理が衛生管理者より人事労務担当者が行っている実態を示し、今後事業場では健康管理面での衛生管理者と人事労務担当責任者の係わり方を明確にすることも必要であるものと考える。
IV. まとめ
回答数は望ましい状況ではなかったが、回答事業場の実態が県内の平均的な事業場のものと推察する。
調査結果において、特に大きな問題点は無かったものと考えるところであるが、現状の産業保健活動の実態は必ずしも適正に行われているとは言えず、低調な面も指摘できる。指摘事項の解決には産業保健関係者がそれぞれの立場から改善に向けての努力が必要で、センターとして今後も意識啓発と産業保健活動への支援活動を行うことをここに研究者は認めあった。